介護タクシー「らくだサービス」の新たな挑戦
介護タクシー「らくだサービス」は、地方の小さな町で、高齢者や障がい者の日常生活を支える送迎サービスを提供している家族経営の会社だった。華やかな活動はなく、目立たない存在だったが、地域の人々に寄り添う姿勢は多くの信頼を集めていた。
そんなある日、一通の電話がかかってきた。内容は、地元で開催されるパラスポーツ「ボッチャ」の全国大会に出場する選手の送迎依頼だった。代表の山田健一は「ボッチャ」という言葉を初めて耳にしたが、その声の奥に秘められた期待と希望を感じた。
初めてのボッチャ体験
大会当日、山田は自ら運転席に座り、選手を迎えに行った。選手は車いすを使用しており、競技用具を運ぶのも初めての経験だったが、丁寧に対応するうちに自然と緊張もほぐれていった。選手の笑顔に触れるたびに、山田の胸には温かな感動が広がった。
道中、選手はボッチャについて熱く語ってくれた。
「ボッチャは、ただの競技じゃありません。年齢や障がいの有無に関係なく、誰もが参加できるスポーツなんです。ルールはシンプルですが、戦略や集中力が求められ、奥深い楽しさがあります。」
その言葉は、山田の心を深く揺さぶった。彼は試合を観戦するため、急遽大会会場にも足を運んだ。会場にはさまざまな背景を持つ選手たちが集まり、互いに励まし合いながら競技に挑む姿があった。その中には小学生から高齢者まで幅広い年齢層の選手が混じり、それぞれがボッチャの楽しさを全身で表現していた。
「ボッチャって本当にすごい。みんなが同じ舞台で競い合えるスポーツなんだ。」
山田はその光景に感動し、ボッチャが持つ包容力の大きさを実感した。
新たな目標への一歩
それ以来、山田はボッチャを支える活動を自分たちの使命だと感じるようになった。まずは地元のボッチャクラブと提携し、選手たちが練習や試合に参加できるよう、無償での送迎サービスを提供する取り組みを開始した。
山田の行動は地域社会にも広がり、地元の小学校や高齢者施設でのボッチャ体験イベントにも協力するようになった。その中で、障がいの有無に関係なく、全ての参加者が笑顔で楽しむ姿を見た山田は、ボッチャが持つ素晴らしい力を確信した。
スポンサー企業としての飛躍
数年後、「らくだサービス」は正式にボッチャのスポンサーとなり、全国大会や地域リーグへの支援を行うようになった。ユニフォームに自社のロゴを掲げる選手たちの姿は、山田にとって誇りそのものだった。
「ボッチャに出会い、人と人がつながる力を知りました。この素晴らしいスポーツの可能性を、もっと多くの人に届けたい。」
その想いは会社の理念となり、「らくだサービス」は小さな介護タクシー会社から、ボッチャの普及と発展を支援する企業へと成長した。
現在、「らくだサービス」は国内外のボッチャ大会に積極的に関与し、SNSやメディアを通じてその魅力を発信している。そして、世界中のボッチャファンから「ボッチャの伝道師」として親しまれる存在となった。
らくだサービスの物語は、小さな会社がスポーツとの出会いを通じて新たな使命を見つけ、人々に感動を届ける姿を描いている。それは、ボッチャが持つ無限の可能性と、人間の絆の力を証明する物語である。
第26回 ボッチャ日本選手権大会に寄せて 2025年1月18日(土)
